《象の導き/Elephant Guide》型ストンピィ①そもそも何故オーラ?
2017年11月7日 ストンピィ
一連の記事では、2017年11月初頭現在、何故《象の導き/Elephant Guide》を4枚積みしたストンピィが勢力を拡大しているのかについて述べる。
何項目かに分かれるので先に全体を三行で要約しておくと、
・ストンピィというデッキタイプの特性上、オーラでの恒久的強化が強いのは当然
・高いリスクを伴うので使いづらかったが、ストンピィの高速化の影響でかなり改善された
・現状のメタゲームにがっちりと嵌った上で地力が高いデッキなので勢力を伸ばした
となる。
この①では前史を整理する。
■継続的打撃力という観点
緑の速攻デッキであるストンピィと、赤の速攻デッキであるバーンとを分かつ最大の要素は、ライフゲインへの耐性だ。クリーチャーは火力と違い、毎ターン継続的にダメージを生み出すことに手札消費を要求しない。ライフを回復されても苦しくはなるが詰みはしない。
MTGの全時代を通しての緑の最強コモンと言って過言でない《怨恨/Rancor》が強い最大の理由は、1マナにして毎ターン2ダメージを追加する、しかも即効性がある砲台という圧倒的なダメージ効率の良さにある。これがいかに強いかはバーンが使う《貫かれた心臓の呪い/Curse of the Pierced Heart》が2マナで毎ターン1点であるのと比べれば一目瞭然。勿論、その代償として幾つかのデメリットがあるのだが。
■《炎樹族の使者/Burning-Tree Emissary》以前における《巨大化/Giant Growth》系の役割
ストンピィのこの性質と本来対極的なのが《巨大化/Giant Growth》系*呪文だ。本体火力として使うと当然手札からなくなり、ハンドアドバンテージを失う。また、ストンピィは基本的に常に攻撃側に回っているデッキであるため、相手のクリーチャーにブロックされる機会が多い。そこで疑似除去として巨大化系を使うケースがしばしば発生するが、この使い方は
・対応除去されて目も当てられないことになるリスクがある
・無事に通った場合でも、純粋な除去呪文と違いクリーチャーの攻撃分のダメージを吸われてしまっているためリターンが微妙
という二点の都合でほんっっっっっとうに弱いので可能な限り避けたいものだった。したがって、巨大化系は攻撃時に使う呪文ではなく、もっぱら相手の除去へのカウンターとして使われるのが主だった。
*この記事で言う巨大化系とは、ターンエンド時に消滅する修正や能力を与えるカード群を指す。要するに《巨森の蔦/Vines of Vastwood》は含むが《吠え群れの飢え/Hunger of the Howlpack》は含まない。
■攻撃力の不足
《炎樹族の使者/Burning-Tree Emissary》以前のストンピィは、デッキ中20枚がマナ関連(土地+レインジャー)、8枚は最低入る巨大化系は基本的に防御用、残りは22枚程の2/2前後の攻撃用クリーチャー、4枚の怨恨、4枚フリースロット。こういうスロットの割り方をしていた。
この数字を見ると、攻撃力が実は不足気味ということが分かる。《怨恨/Rancor》を引けなかった時の突破力の不足は明らかだった。このため、使者以前のストンピィはタフネス3以上のブロッカー、特に2/3以上で2/2が討ち取られてしまうブロッカーの突破に難渋していた。
ストンピィ側から見て手強いクリーチャーの具体例は、《尖塔のゴーレム/Spire Golem》、《コーの空漁師/Kor Skyfisher》、《グルマグのアンコウ/Gurmag Angler》、親和の4/4クリーチャー群+エイトグなどなど。星になって消え去った《流浪のドレイク/Peregrine Drake》の強い要素として、昔のクリーチャーの癖に何故かタフ3あった点は決して小さくなかった。
■恒久的修正を求めて――《吠え群れの飢え/Hunger of the Howlpack》
この攻撃力不足を補うために強化が必要で、しかし巨大化系は攻撃に使うと弱い。であれば場に残る強化だ。その点、上手く嵌まれば圧倒的マナ効率を誇る《吠え群れの飢え/Hunger of the Howlpack》は期待株だった。
このカードは使者以前から一部の人はメイン4枚当然でしょという顔でプレイしていたが、本格的に標準装備となったのは使者以後だ。
詳しくはこの記事を。
補足すると、このカードがもたらす恒久的+3/+3修正は単なる2/2に使ってさえアンコウ相当のフィニッシャーとなり、ストンピィが有する回避(&除去耐性)持ちに使えば必勝と言っていいものだった。
では何故使者以前ではせいぜい添え物程度の枚数(1~2枚)しか使われていないリストが多かったのかというと、このカードが有効に機能するためには、《巣の侵略者/Nest Invader》のトークンを除き、
・相手が除去を打ちたいレベル(最低2/2)のクリーチャーが出る
・更にそれが死んだ場合でも殴り役になれるクリーチャーが横にいる
・自分が1マナ構えている
・対応除去あるいはカウンターをされない
の全てを満たす必要がある。見て分かるがハードルとして相当高い。最初の項はブロッカーとの相討ちでもいいが、その場合最後の項を満たすのがやや難しい。
《炎樹族の使者/Burning-Tree Emissary》のマナ加速つき2/2という性能はこの条件成立を大きく楽にしてくれたため、効果の大きな《吠え群れの飢え/Hunger of the Howlpack》は標準装備として受け入れられたと言える。
何項目かに分かれるので先に全体を三行で要約しておくと、
・ストンピィというデッキタイプの特性上、オーラでの恒久的強化が強いのは当然
・高いリスクを伴うので使いづらかったが、ストンピィの高速化の影響でかなり改善された
・現状のメタゲームにがっちりと嵌った上で地力が高いデッキなので勢力を伸ばした
となる。
この①では前史を整理する。
■継続的打撃力という観点
緑の速攻デッキであるストンピィと、赤の速攻デッキであるバーンとを分かつ最大の要素は、ライフゲインへの耐性だ。クリーチャーは火力と違い、毎ターン継続的にダメージを生み出すことに手札消費を要求しない。ライフを回復されても苦しくはなるが詰みはしない。
MTGの全時代を通しての緑の最強コモンと言って過言でない《怨恨/Rancor》が強い最大の理由は、1マナにして毎ターン2ダメージを追加する、しかも即効性がある砲台という圧倒的なダメージ効率の良さにある。これがいかに強いかはバーンが使う《貫かれた心臓の呪い/Curse of the Pierced Heart》が2マナで毎ターン1点であるのと比べれば一目瞭然。勿論、その代償として幾つかのデメリットがあるのだが。
■《炎樹族の使者/Burning-Tree Emissary》以前における《巨大化/Giant Growth》系の役割
ストンピィのこの性質と本来対極的なのが《巨大化/Giant Growth》系*呪文だ。本体火力として使うと当然手札からなくなり、ハンドアドバンテージを失う。また、ストンピィは基本的に常に攻撃側に回っているデッキであるため、相手のクリーチャーにブロックされる機会が多い。そこで疑似除去として巨大化系を使うケースがしばしば発生するが、この使い方は
・対応除去されて目も当てられないことになるリスクがある
・無事に通った場合でも、純粋な除去呪文と違いクリーチャーの攻撃分のダメージを吸われてしまっているためリターンが微妙
という二点の都合でほんっっっっっとうに弱いので可能な限り避けたいものだった。したがって、巨大化系は攻撃時に使う呪文ではなく、もっぱら相手の除去へのカウンターとして使われるのが主だった。
*この記事で言う巨大化系とは、ターンエンド時に消滅する修正や能力を与えるカード群を指す。要するに《巨森の蔦/Vines of Vastwood》は含むが《吠え群れの飢え/Hunger of the Howlpack》は含まない。
■攻撃力の不足
《炎樹族の使者/Burning-Tree Emissary》以前のストンピィは、デッキ中20枚がマナ関連(土地+レインジャー)、8枚は最低入る巨大化系は基本的に防御用、残りは22枚程の2/2前後の攻撃用クリーチャー、4枚の怨恨、4枚フリースロット。こういうスロットの割り方をしていた。
この数字を見ると、攻撃力が実は不足気味ということが分かる。《怨恨/Rancor》を引けなかった時の突破力の不足は明らかだった。このため、使者以前のストンピィはタフネス3以上のブロッカー、特に2/3以上で2/2が討ち取られてしまうブロッカーの突破に難渋していた。
ストンピィ側から見て手強いクリーチャーの具体例は、《尖塔のゴーレム/Spire Golem》、《コーの空漁師/Kor Skyfisher》、《グルマグのアンコウ/Gurmag Angler》、親和の4/4クリーチャー群+エイトグなどなど。星になって消え去った《流浪のドレイク/Peregrine Drake》の強い要素として、昔のクリーチャーの癖に何故かタフ3あった点は決して小さくなかった。
■恒久的修正を求めて――《吠え群れの飢え/Hunger of the Howlpack》
この攻撃力不足を補うために強化が必要で、しかし巨大化系は攻撃に使うと弱い。であれば場に残る強化だ。その点、上手く嵌まれば圧倒的マナ効率を誇る《吠え群れの飢え/Hunger of the Howlpack》は期待株だった。
このカードは使者以前から一部の人はメイン4枚当然でしょという顔でプレイしていたが、本格的に標準装備となったのは使者以後だ。
詳しくはこの記事を。
【Pauper】MM3後の緑単ストンピィの変化について
http://suzukuma1954.diarynote.jp/201704170108362690/
補足すると、このカードがもたらす恒久的+3/+3修正は単なる2/2に使ってさえアンコウ相当のフィニッシャーとなり、ストンピィが有する回避(&除去耐性)持ちに使えば必勝と言っていいものだった。
では何故使者以前ではせいぜい添え物程度の枚数(1~2枚)しか使われていないリストが多かったのかというと、このカードが有効に機能するためには、《巣の侵略者/Nest Invader》のトークンを除き、
・相手が除去を打ちたいレベル(最低2/2)のクリーチャーが出る
・更にそれが死んだ場合でも殴り役になれるクリーチャーが横にいる
・自分が1マナ構えている
・対応除去あるいはカウンターをされない
の全てを満たす必要がある。見て分かるがハードルとして相当高い。最初の項はブロッカーとの相討ちでもいいが、その場合最後の項を満たすのがやや難しい。
《炎樹族の使者/Burning-Tree Emissary》のマナ加速つき2/2という性能はこの条件成立を大きく楽にしてくれたため、効果の大きな《吠え群れの飢え/Hunger of the Howlpack》は標準装備として受け入れられたと言える。
■使いやすくなったオーラ
《吠え群れの飢え/Hunger of the Howlpack》が標準装備されて意識されるようになると何が起こるかというと、コントロール側が使う除去の裏目の発生だ。わかりやすいケースを提示しよう。
ボロス(あなた)対ストンピィで対戦していて、ストンピィ側が2/2を3体並べている。ボロスの手札にもボードにも頼れるブロッカーとなる2/3や2/4が居らず、放置していると早晩ライフが尽きる。幸い手札には火力があるので、これで1体除去しようとあなたは考えた。現在はあなたのターンで、ストンピィは展開のためタップアウトしている。除去に使えるのは1マナのみ。
ここで考えられるプレイは3通り。
1. 《怨恨/Rancor》を待ち、プレイされなかったら戦闘中に焼く
2. 《怨恨/Rancor》を待ち、プレイされなかったら戦闘後に焼く
3. ストンピィのタップアウト中に焼く
1. は言わずもがな巨大化系での盛大な裏目が発生しうるし、吼え群れで結局除去で軽減した分の2点よりも多い3点のダメージを追加される危険がある。
2. はかつて、特に青黒コンにおいて半分定跡であった手法で、巨大化系での本体ダメージまで喰らう最悪ケースは防げる。ただし、そもそも《怨恨/Rancor》を無防備にこちらのマナが空いている時にプレイしてくる可能性は低い*ことを考えると、《吠え群れの飢え/Hunger of the Howlpack》が増えた現状、「ただ単に2点ダメージを貰う上に、吼え群れのケアも出来ない」という選択になってしまう可能性がある。
所持しているかも分からない怨恨の牽制のためだけに払うには高い代償だ。《怨恨/Rancor》で増えるダメージは2なのだから、0マナ&カード消費無しで《怨恨/Rancor》をプレイさせているようなもの。
こう考えていくと、3. を選ぶ理由がそれなりにある。《怨恨/Rancor》の装着は許してしまうが、そもそも引いていないかも知れないし、手札の(あるなら)2枚目以降の火力やそのうち引くカードで対処すればいいだろう。
以上のように考えて3. を選択した上でターンを返した所、《象の導き/Elephant Guide》が装着されてそのままあなたは負けた。
この例では説明のため単純化したが、《炎樹族の使者/Burning-Tree Emissary》の影響によりストンピィが単純に高速化しているため、いくつかのやり取りを経た後これに近い状態になることは割と起こる。
要するに、《吠え群れの飢え/Hunger of the Howlpack》ケアのために相手がタップアウトないしそれに近い状態でストンピィ側のマナがアクティブになる機会が増えたのだ。①で述べたように、ストンピィは本来的には巨大化系よりも恒久的な強化を使いたいので、着ける隙さえあるならオーラによる恒久的な強化は魅力的だ。
*ストンピィ側としてこの選択(怨恨をプレイせず攻撃)が許されるのも使者の恩恵と言える。必ずしもリスクを背負って《怨恨/Rancor》をつけずとも速度で押し切ってダメージが足りると見込めるケースが増えた。相手はいずれ已む無く除去を消費、あるいはメインフェイズでブロッカーを展開し、出来た隙に、という流れ。
■何故他のオーラではなく《象の導き/Elephant Guide》なのか?
まずは、Pauper環境での火力除去の範囲が理由だ。ボロスや親和の使う《感電破/Galvanic Blast》、赤を含む重コントロールが使う《炎の斬りつけ/Flame Slash》の存在により、タフネス4まではカード1枚で処理される可能性がそれなりに高いが、タフネス5以上を除去できるカードとなるとぐっと選択肢も、採用枚数も減る。布告を除き、入っているデッキでも2枚程度なのが普通。
また、親和が4/4を出してくることは多く、タフネス5のクリーチャーはマッチアップ相性を大きく左右する。
この2つとストンピィの基本サイズが2/2であることを合わせると、恒久的な修正としての+3/3は強いが、+2/2は非常に弱く、リスクを背負ってまで使う価値がない。
ここで殆どのカードが採用候補から消え、残るのは《象の導き/Elephant Guide》《腐れ蔦の外套/Moldervine Cloak》の2枚。修正値こそ同じであり、どちらも強力な効果を持つが、Pauperのストンピィで使う場合はその特性は大きく違う。
《腐れ蔦の外套/Moldervine Cloak》の最大の特徴は、オーラのエンチャントに対応除去されようが、相討ちになろうが、カウンターされようが、クリーチャーの頭数さえ居れば重大な問題とはならないということだ。場のクリーチャーの数だけ4/4~5/5を生成できる。クリーチャーが死ぬたびにアドバンテージを失いつつも、生物の弾幕の分厚さで敵を圧倒するという戦い方に適している。
《象の導き/Elephant Guide》は装着時に対応されると何一つ残らない悲惨な状況になる。しかしそのタイミングさえ乗り越えてしまえば、残る脅威は追放系除去/バウンスのみだ。横のクリーチャーが次々に殺されていってついに強化したクリーチャーを布告で殺される厳しい展開となってさえ、3/3が出て殴り始める。全体除去、要は《渦巻く砂嵐/Swirling Sandstorm》にもある程度耐性がある点は重要。
筆者の考えとしては、使者以前では《腐れ蔦の外套/Moldervine Cloak》の方が明らかに強かった。環境にはバウンスをメインの除去とする青単が跋扈していたのでこのカードのカウンターに非常に強い性質が活きたし、巨大化系で自分のクリーチャーを守るのが基本だったことから、一定ターンが過ぎても自軍のコントロールするクリーチャーの頭数は多いままでエンチャント先に困ることはなかった。また、中盤以降突破力に欠け、「もう熊も土地も要らないんだ、強化をくれ!」と祈るケースがそれなりに発生するデッキだったので、何度でも確実に強化をトップデッキさせてくれるこのカードのデッキとの噛み合いは非常に良かった。
使者以後のストンピィは
・自軍のクリーチャーが除去されたら死ぬに任せるのが普通になった
・そのため最終的にクリーチャーが全滅する危険性が増した
・代わりに展開速度がかなり上昇した
・初手付近以外で引いた《炎樹族の使者/Burning-Tree Emissary》のマナの使い途に乏しい
という特性を持っている。これらの点と、エンチャントした先が死んでも3/3が出て一応アド損せず、かつ攻め手が続くという《象の導き/Elephant Guide》の特徴は綺麗に合致し、デッキパワーを高いものへと押し上げている。
《吠え群れの飢え/Hunger of the Howlpack》が標準装備されて意識されるようになると何が起こるかというと、コントロール側が使う除去の裏目の発生だ。わかりやすいケースを提示しよう。
ボロス(あなた)対ストンピィで対戦していて、ストンピィ側が2/2を3体並べている。ボロスの手札にもボードにも頼れるブロッカーとなる2/3や2/4が居らず、放置していると早晩ライフが尽きる。幸い手札には火力があるので、これで1体除去しようとあなたは考えた。現在はあなたのターンで、ストンピィは展開のためタップアウトしている。除去に使えるのは1マナのみ。
ここで考えられるプレイは3通り。
1. 《怨恨/Rancor》を待ち、プレイされなかったら戦闘中に焼く
2. 《怨恨/Rancor》を待ち、プレイされなかったら戦闘後に焼く
3. ストンピィのタップアウト中に焼く
1. は言わずもがな巨大化系での盛大な裏目が発生しうるし、吼え群れで結局除去で軽減した分の2点よりも多い3点のダメージを追加される危険がある。
2. はかつて、特に青黒コンにおいて半分定跡であった手法で、巨大化系での本体ダメージまで喰らう最悪ケースは防げる。ただし、そもそも《怨恨/Rancor》を無防備にこちらのマナが空いている時にプレイしてくる可能性は低い*ことを考えると、《吠え群れの飢え/Hunger of the Howlpack》が増えた現状、「ただ単に2点ダメージを貰う上に、吼え群れのケアも出来ない」という選択になってしまう可能性がある。
所持しているかも分からない怨恨の牽制のためだけに払うには高い代償だ。《怨恨/Rancor》で増えるダメージは2なのだから、0マナ&カード消費無しで《怨恨/Rancor》をプレイさせているようなもの。
こう考えていくと、3. を選ぶ理由がそれなりにある。《怨恨/Rancor》の装着は許してしまうが、そもそも引いていないかも知れないし、手札の(あるなら)2枚目以降の火力やそのうち引くカードで対処すればいいだろう。
以上のように考えて3. を選択した上でターンを返した所、《象の導き/Elephant Guide》が装着されてそのままあなたは負けた。
この例では説明のため単純化したが、《炎樹族の使者/Burning-Tree Emissary》の影響によりストンピィが単純に高速化しているため、いくつかのやり取りを経た後これに近い状態になることは割と起こる。
要するに、《吠え群れの飢え/Hunger of the Howlpack》ケアのために相手がタップアウトないしそれに近い状態でストンピィ側のマナがアクティブになる機会が増えたのだ。①で述べたように、ストンピィは本来的には巨大化系よりも恒久的な強化を使いたいので、着ける隙さえあるならオーラによる恒久的な強化は魅力的だ。
*ストンピィ側としてこの選択(怨恨をプレイせず攻撃)が許されるのも使者の恩恵と言える。必ずしもリスクを背負って《怨恨/Rancor》をつけずとも速度で押し切ってダメージが足りると見込めるケースが増えた。相手はいずれ已む無く除去を消費、あるいはメインフェイズでブロッカーを展開し、出来た隙に、という流れ。
■何故他のオーラではなく《象の導き/Elephant Guide》なのか?
まずは、Pauper環境での火力除去の範囲が理由だ。ボロスや親和の使う《感電破/Galvanic Blast》、赤を含む重コントロールが使う《炎の斬りつけ/Flame Slash》の存在により、タフネス4まではカード1枚で処理される可能性がそれなりに高いが、タフネス5以上を除去できるカードとなるとぐっと選択肢も、採用枚数も減る。布告を除き、入っているデッキでも2枚程度なのが普通。
また、親和が4/4を出してくることは多く、タフネス5のクリーチャーはマッチアップ相性を大きく左右する。
この2つとストンピィの基本サイズが2/2であることを合わせると、恒久的な修正としての+3/3は強いが、+2/2は非常に弱く、リスクを背負ってまで使う価値がない。
ここで殆どのカードが採用候補から消え、残るのは《象の導き/Elephant Guide》《腐れ蔦の外套/Moldervine Cloak》の2枚。修正値こそ同じであり、どちらも強力な効果を持つが、Pauperのストンピィで使う場合はその特性は大きく違う。
《腐れ蔦の外套/Moldervine Cloak》の最大の特徴は、オーラのエンチャントに対応除去されようが、相討ちになろうが、カウンターされようが、クリーチャーの頭数さえ居れば重大な問題とはならないということだ。場のクリーチャーの数だけ4/4~5/5を生成できる。クリーチャーが死ぬたびにアドバンテージを失いつつも、生物の弾幕の分厚さで敵を圧倒するという戦い方に適している。
《象の導き/Elephant Guide》は装着時に対応されると何一つ残らない悲惨な状況になる。しかしそのタイミングさえ乗り越えてしまえば、残る脅威は追放系除去/バウンスのみだ。横のクリーチャーが次々に殺されていってついに強化したクリーチャーを布告で殺される厳しい展開となってさえ、3/3が出て殴り始める。全体除去、要は《渦巻く砂嵐/Swirling Sandstorm》にもある程度耐性がある点は重要。
筆者の考えとしては、使者以前では《腐れ蔦の外套/Moldervine Cloak》の方が明らかに強かった。環境にはバウンスをメインの除去とする青単が跋扈していたのでこのカードのカウンターに非常に強い性質が活きたし、巨大化系で自分のクリーチャーを守るのが基本だったことから、一定ターンが過ぎても自軍のコントロールするクリーチャーの頭数は多いままでエンチャント先に困ることはなかった。また、中盤以降突破力に欠け、「もう熊も土地も要らないんだ、強化をくれ!」と祈るケースがそれなりに発生するデッキだったので、何度でも確実に強化をトップデッキさせてくれるこのカードのデッキとの噛み合いは非常に良かった。
使者以後のストンピィは
・自軍のクリーチャーが除去されたら死ぬに任せるのが普通になった
・そのため最終的にクリーチャーが全滅する危険性が増した
・代わりに展開速度がかなり上昇した
・初手付近以外で引いた《炎樹族の使者/Burning-Tree Emissary》のマナの使い途に乏しい
という特性を持っている。これらの点と、エンチャントした先が死んでも3/3が出て一応アド損せず、かつ攻め手が続くという《象の導き/Elephant Guide》の特徴は綺麗に合致し、デッキパワーを高いものへと押し上げている。
*一部追記あり。親和のサイド後についてと、書き忘れていた呪禁について。(11/9)
■ボロスとの相性の大幅な改善
参考リスト:
https://www.mtggoldfish.com/deck/428050#online
https://www.mtggoldfish.com/deck/516724#online
https://www.mtggoldfish.com/archetype/pauper-kuldotha-boros-21706#paper
(リスト単体というよりは右側の結果の量)
《金切るときの声/Battle Screech》と《農民の結集/Rally the Peasants》を採用したアグロカルドーサの登場以前、ストンピィからボロスに対して最も有効な攻撃手段は《シラナの岩礁渡り/Silhana Ledgewalker》+《怨恨/Rancor》だった。地上クリーチャーによるブロックを許さず、除去も許さず、飛行ブロッカーは巨大化系で退ける。
《金切るときの声/Battle Screech》の採用以降、《シラナの岩礁渡り/Silhana Ledgewalker》は強化呪文を1/1飛行のブロックに対して逐一使うか、《吠え群れの飢え/Hunger of the Howlpack》を運良く引けるかしないと意味がないカードとなり、使いづらくなった。
しかし、この型のストンピィでは《象の導き/Elephant Guide》を4枚と大量に投入することでシラナの問題点をほぼ解消し、相手に対応を許さない攻撃力で迅速にライフを削りきることが可能になっている。
もし地上クリーチャーにつけた場合でも火力の範囲外に逃げられ、《未達への旅/Journey to Nowhere》でさえなければ対処されたとしても3/3が残ってアド損しないのも大きい。Pauper Challengeでの凄まじい入賞数でも明らかなように勢力を増しているボロス統治者に対し有利が付く点は従来型のストンピィとは一線を画した魅力がある。
■メタゲーム上の立ち位置
「何故象ストンピィが今勢力を拡大したのか」の理由は多分これが全てなので、後は個別のマッチ成績の数字と簡単な相性分析で見て欲しい。実際に対戦しないと気づきにくい点は赤字にしておいた。
ストンピィミラーマッチ(4-6)
・象の導き型完全ミラー
互いにスカージ非採用の場合、当然だが五分。そしてインスタントタイミングの行動が少なく、プレイングで差がつく余地はほぼ無いので純粋に引きゲー&先手ゲーである。このタイプに《大霊堂のスカージ/Vault Skirge》を(多めに)採用すると、相手のenc/art破壊の対象が増えるデメリットがある。両方入れている相手と当たったら《上機嫌の破壊/Gleeful Sabotage》をサイドインしていい。枚数はよく分からない。ダブると恐らく辛いので2枚位が適正か。
・従来型ストンピィ
スカージを採用しているケースが多く、その点で不利。《リバー・ボア/River Boa》はこちらに強化が多く、スカルガンでもシラナでも回避が容易なので然程の脅威にはならない。タフネス強化が多くない分《ヴィリジアンの長弓/Viridian Longbow》がかなり有効。3枚は悩むが2枚は確実に入れていい。
対ストンピィ全体
《象の導き/Elephant Guide》は単純に巨大なクリーチャーを作り出せて、対処してもストンピィの基本サイズを越える3/3が出るため、有効か有効でないかなら有効なカードだが、先手2T目《炎樹族の使者/Burning-Tree Emissary》経由のブン回りの圧倒的テンポの前には無力なので、後手時に覆す程の力は持っていない。自分が先手で3Tに貼り付ければ強いが、結局それは先手ゲーである。よってスカージゲーの次のステップに訪れるのは引きゲー&先手ゲーである。《象の導き/Elephant Guide》の勝敗寄与度は3番手に過ぎず、多分そこまで高いわけではない。
細かくは集計していないのでどちら相手に何戦勝って負けたかは不明だが、対戦成績は4-6。
恥を偲んで白状しておくと、使者以降のストンピィはプレイで差がつかないとか書いている癖に、《勇壮な対決/Epic Confrontation》を《巨森の蔦/Vines of Vastwood》でカウンターする際に「相手のクリーチャーを対象に取らないと+1/2修正だけは有効になる」ことを完全に失念していて、その1点分のダメージにより、「《ヴィリジアンの長弓/Viridian Longbow》での完全制圧が目前だが、どう調整しても相手のラストドローで+2以上の強化カードを引かれると死ぬ」という局面になってしまい、めでたくその通りに引かれて死んで負けた回はある。この負けは結構落ち込んだ。デルバー戦程の差はつかないのは確かだと思うが油断は禁物。
・親和(9-1)
圧倒的有利。5/5作成によって4/4をビタ止まりさせることが可能で、かつシラナを4/4にして迅速に上から殴れる確率が高まっている。最悪、強化を重ねてデカブツ+《怨恨/Rancor》ビートという選択肢を取ることもできるのも強みと言える。サイド後は使者以後のストンピィの長所である、《上機嫌の破壊/Gleeful Sabotage》用のクリーチャーを展開しやすい点で更に有利にと言いたいが、データを良く見るとメインは先手後手問わず4-1、サイド後は先手7-0, 後手5-5だった。使者が初手にないと、デッキ判明後に親和が先手でブン回りを意識してキープした場合やはり間に合いづらいのかも知れない。
・青赤デルバー(7-2)
実はもの凄く有利というわけでもない。《リバー・ボア/River Boa》でのイージーウィンが無い分従来型よりもプレイの質――相手の手札状況を読んで最適ルートを辿れるか――が強く問われる。対戦していて非常に楽しい。
《象の導き/Elephant Guide》型は《散弾の射手/Scattershot Archer》が《空への斉射/Aerial Volley》へと入れ替えられがちな点をついて《フェアリーの悪党/Faerie Miscreant》がサイド後も残っているケースが多いようなので、《散弾の射手/Scattershot Archer》があると戦いやすい。単純に《象の導き/Elephant Guide》の前に除去を釣る意味でも有益。
・ボロス(5-3)
シラナ&+3/3パッケージが完成する確率が高まっており、基本的に有利である。従来型は明確に不利がつくことと比べると非常に相性が改善していると言っていい。《緑の防御円/Circle of Protection: Green》や《虹色の断片/Prismatic Strands》複数枚が無ければ負けることはそう無いだろう。ただしそれなりにドロー力が高く、結構来てしまうので《上機嫌の破壊/Gleeful Sabotage》は用意するべき。《大祖始の遺産/Relic of Progenitus》は疑問。
《軍旗の旗手/Standard Bearer》、《きらめく鷹/Glint Hawk》、《金切るときの声/Battle Screech》の3種類を睨むことが可能な点で、《ヴィリジアンの長弓/Viridian Longbow》がそれなりに有効だと考えられる。
対空枠のサイドボードは、除去を釣れる《散弾の射手/Scattershot Archer》と、特に《コーの空漁師/Kor Skyfisher》を焼ける《空への斉射/Aerial Volley》とで一長一短だが、地上クリーチャーを強化してもチャンプブロック及び《未達への旅/Journey to Nowhere》に悩まされることを考えると、シラナによる突破に注力するのが恐らく良いため、ボロスを強く意識するならば《空への斉射/Aerial Volley》の方がベターだろう。
・青単デルバー(4-0)
このデッキの特徴であるシラナと象の導きは、対青単では上手くセットで揃ってカウンターを掻い潜れない限り全く有効でないカードなので、従来型より明らかに相性は悪化している。ただしデッキのベースの相性自体は有利なままであるのが結果に幸いしているのかと。プレイを一つでも間違えると負ける可能性は高く、これもプレイしていて楽しい。《ヴィリジアンの長弓/Viridian Longbow》は極めて有効である。古典的な《上機嫌の破壊/Gleeful Sabotage》の2~3枚サイドインは忘れずに。
・青黒アンコウコントロール(7-0)
シラナ&+3/3パッケージが強すぎるので相性はいい。メインは事故以外楽勝、サイド後はプロ緑2/2の存在により地上がビタ止まりする危険性が高くなるのでシラナへの依存度が上がり、こちらから有効なサイドボードは特に無いので多少負ける可能性が出てくるが有利なことは変わらない。
・ウィーゼロックス(5-2)
正直不利だと思うが勝ち越している。メイン先手となった4戦中、4戦全てを取りきれているのが大きいのではないだろうか。《象の導き/Elephant Guide》によるパワー+3はクリーチャーで殴るよりも1ターン早いので、1ターンを争う戦いでは大きな影響力を持つし、《クウィリーオン・レインジャー/Quirion Ranger》を使って《象の導き/Elephant Guide》がついたクリーチャーをアンタップすればブロッカーとしてタフネス7程度なら用意することが可能になり、相手が《ティムールの激闘/Temur Battle Rage》で削りきるのに必要なストームカウントが1枚増えるのも大きいのかも知れない。
・ディンローヴァトロン(3-4)
・ファミリアコンボ(1-2)
・エルフ(1-2)
ストンピィでは基本的に運良く先手で押しきれない限り勝ち目がない。従来型より少しだけ速度が早く、チャンプブロックされにくい所を強化できるため、理論上多少はマシなのが多少の勝ち星に繋がっていると思われる。マッチアップ全体として勝ち越せるわけはないのである程度は諦めも肝心。
・バーン(1-1)
負けた回は相手先手2T《熱錬金術師/Thermo-Alchemist》からのパーフェクトハンド+G2でダブマリ&事故。勝った回はこちら先手ブン回り+後手で《灰の殉教者/Martyr of Ashes》でリセットされてから《象の導き/Elephant Guide》で立て直して勝ち。特にプレイに選択肢があったシーンは思いつかないので回った方が勝ち。
・呪禁(4-2)
理屈の上では、メインにおいて強化の量が多いため、「一瞬相手のサイズを上回る瞬間を作れる」可能性が高まっている。これにより従来型より多少分がよくなっていると考えられる。まぁそれでもメインは2-4だが。サイド後は《象の導き/Elephant Guide》はサイドアウトされるため特に従来型との差はない。《リバー・ボア/River Boa》よりはシラナの方が多分強いねという位。
■ボロスとの相性の大幅な改善
参考リスト:
https://www.mtggoldfish.com/deck/428050#online
https://www.mtggoldfish.com/deck/516724#online
https://www.mtggoldfish.com/archetype/pauper-kuldotha-boros-21706#paper
(リスト単体というよりは右側の結果の量)
《金切るときの声/Battle Screech》と《農民の結集/Rally the Peasants》を採用したアグロカルドーサの登場以前、ストンピィからボロスに対して最も有効な攻撃手段は《シラナの岩礁渡り/Silhana Ledgewalker》+《怨恨/Rancor》だった。地上クリーチャーによるブロックを許さず、除去も許さず、飛行ブロッカーは巨大化系で退ける。
《金切るときの声/Battle Screech》の採用以降、《シラナの岩礁渡り/Silhana Ledgewalker》は強化呪文を1/1飛行のブロックに対して逐一使うか、《吠え群れの飢え/Hunger of the Howlpack》を運良く引けるかしないと意味がないカードとなり、使いづらくなった。
しかし、この型のストンピィでは《象の導き/Elephant Guide》を4枚と大量に投入することでシラナの問題点をほぼ解消し、相手に対応を許さない攻撃力で迅速にライフを削りきることが可能になっている。
もし地上クリーチャーにつけた場合でも火力の範囲外に逃げられ、《未達への旅/Journey to Nowhere》でさえなければ対処されたとしても3/3が残ってアド損しないのも大きい。Pauper Challengeでの凄まじい入賞数でも明らかなように勢力を増しているボロス統治者に対し有利が付く点は従来型のストンピィとは一線を画した魅力がある。
■メタゲーム上の立ち位置
「何故象ストンピィが今勢力を拡大したのか」の理由は多分これが全てなので、後は個別のマッチ成績の数字と簡単な相性分析で見て欲しい。実際に対戦しないと気づきにくい点は赤字にしておいた。
ストンピィミラーマッチ(4-6)
・象の導き型完全ミラー
互いにスカージ非採用の場合、当然だが五分。そしてインスタントタイミングの行動が少なく、プレイングで差がつく余地はほぼ無いので純粋に引きゲー&先手ゲーである。このタイプに《大霊堂のスカージ/Vault Skirge》を(多めに)採用すると、相手のenc/art破壊の対象が増えるデメリットがある。両方入れている相手と当たったら《上機嫌の破壊/Gleeful Sabotage》をサイドインしていい。枚数はよく分からない。ダブると恐らく辛いので2枚位が適正か。
・従来型ストンピィ
スカージを採用しているケースが多く、その点で不利。《リバー・ボア/River Boa》はこちらに強化が多く、スカルガンでもシラナでも回避が容易なので然程の脅威にはならない。タフネス強化が多くない分《ヴィリジアンの長弓/Viridian Longbow》がかなり有効。3枚は悩むが2枚は確実に入れていい。
対ストンピィ全体
《象の導き/Elephant Guide》は単純に巨大なクリーチャーを作り出せて、対処してもストンピィの基本サイズを越える3/3が出るため、有効か有効でないかなら有効なカードだが、先手2T目《炎樹族の使者/Burning-Tree Emissary》経由のブン回りの圧倒的テンポの前には無力なので、後手時に覆す程の力は持っていない。自分が先手で3Tに貼り付ければ強いが、結局それは先手ゲーである。よってスカージゲーの次のステップに訪れるのは引きゲー&先手ゲーである。《象の導き/Elephant Guide》の勝敗寄与度は3番手に過ぎず、多分そこまで高いわけではない。
細かくは集計していないのでどちら相手に何戦勝って負けたかは不明だが、対戦成績は4-6。
恥を偲んで白状しておくと、使者以降のストンピィはプレイで差がつかないとか書いている癖に、《勇壮な対決/Epic Confrontation》を《巨森の蔦/Vines of Vastwood》でカウンターする際に「相手のクリーチャーを対象に取らないと+1/2修正だけは有効になる」ことを完全に失念していて、その1点分のダメージにより、「《ヴィリジアンの長弓/Viridian Longbow》での完全制圧が目前だが、どう調整しても相手のラストドローで+2以上の強化カードを引かれると死ぬ」という局面になってしまい、めでたくその通りに引かれて死んで負けた回はある。この負けは結構落ち込んだ。デルバー戦程の差はつかないのは確かだと思うが油断は禁物。
・親和(9-1)
圧倒的有利。5/5作成によって4/4をビタ止まりさせることが可能で、かつシラナを4/4にして迅速に上から殴れる確率が高まっている。最悪、強化を重ねてデカブツ+《怨恨/Rancor》ビートという選択肢を取ることもできるのも強みと言える。サイド後は使者以後のストンピィの長所である、《上機嫌の破壊/Gleeful Sabotage》用のクリーチャーを展開しやすい点で更に有利にと言いたいが、データを良く見るとメインは先手後手問わず4-1、サイド後は先手7-0, 後手5-5だった。使者が初手にないと、デッキ判明後に親和が先手でブン回りを意識してキープした場合やはり間に合いづらいのかも知れない。
・青赤デルバー(7-2)
実はもの凄く有利というわけでもない。《リバー・ボア/River Boa》でのイージーウィンが無い分従来型よりもプレイの質――相手の手札状況を読んで最適ルートを辿れるか――が強く問われる。対戦していて非常に楽しい。
《象の導き/Elephant Guide》型は《散弾の射手/Scattershot Archer》が《空への斉射/Aerial Volley》へと入れ替えられがちな点をついて《フェアリーの悪党/Faerie Miscreant》がサイド後も残っているケースが多いようなので、《散弾の射手/Scattershot Archer》があると戦いやすい。単純に《象の導き/Elephant Guide》の前に除去を釣る意味でも有益。
・ボロス(5-3)
シラナ&+3/3パッケージが完成する確率が高まっており、基本的に有利である。従来型は明確に不利がつくことと比べると非常に相性が改善していると言っていい。《緑の防御円/Circle of Protection: Green》や《虹色の断片/Prismatic Strands》複数枚が無ければ負けることはそう無いだろう。ただしそれなりにドロー力が高く、結構来てしまうので《上機嫌の破壊/Gleeful Sabotage》は用意するべき。《大祖始の遺産/Relic of Progenitus》は疑問。
《軍旗の旗手/Standard Bearer》、《きらめく鷹/Glint Hawk》、《金切るときの声/Battle Screech》の3種類を睨むことが可能な点で、《ヴィリジアンの長弓/Viridian Longbow》がそれなりに有効だと考えられる。
対空枠のサイドボードは、除去を釣れる《散弾の射手/Scattershot Archer》と、特に《コーの空漁師/Kor Skyfisher》を焼ける《空への斉射/Aerial Volley》とで一長一短だが、地上クリーチャーを強化してもチャンプブロック及び《未達への旅/Journey to Nowhere》に悩まされることを考えると、シラナによる突破に注力するのが恐らく良いため、ボロスを強く意識するならば《空への斉射/Aerial Volley》の方がベターだろう。
・青単デルバー(4-0)
このデッキの特徴であるシラナと象の導きは、対青単では上手くセットで揃ってカウンターを掻い潜れない限り全く有効でないカードなので、従来型より明らかに相性は悪化している。ただしデッキのベースの相性自体は有利なままであるのが結果に幸いしているのかと。プレイを一つでも間違えると負ける可能性は高く、これもプレイしていて楽しい。《ヴィリジアンの長弓/Viridian Longbow》は極めて有効である。古典的な《上機嫌の破壊/Gleeful Sabotage》の2~3枚サイドインは忘れずに。
・青黒アンコウコントロール(7-0)
シラナ&+3/3パッケージが強すぎるので相性はいい。メインは事故以外楽勝、サイド後はプロ緑2/2の存在により地上がビタ止まりする危険性が高くなるのでシラナへの依存度が上がり、こちらから有効なサイドボードは特に無いので多少負ける可能性が出てくるが有利なことは変わらない。
・ウィーゼロックス(5-2)
正直不利だと思うが勝ち越している。メイン先手となった4戦中、4戦全てを取りきれているのが大きいのではないだろうか。《象の導き/Elephant Guide》によるパワー+3はクリーチャーで殴るよりも1ターン早いので、1ターンを争う戦いでは大きな影響力を持つし、《クウィリーオン・レインジャー/Quirion Ranger》を使って《象の導き/Elephant Guide》がついたクリーチャーをアンタップすればブロッカーとしてタフネス7程度なら用意することが可能になり、相手が《ティムールの激闘/Temur Battle Rage》で削りきるのに必要なストームカウントが1枚増えるのも大きいのかも知れない。
・ディンローヴァトロン(3-4)
・ファミリアコンボ(1-2)
・エルフ(1-2)
ストンピィでは基本的に運良く先手で押しきれない限り勝ち目がない。従来型より少しだけ速度が早く、チャンプブロックされにくい所を強化できるため、理論上多少はマシなのが多少の勝ち星に繋がっていると思われる。マッチアップ全体として勝ち越せるわけはないのである程度は諦めも肝心。
・バーン(1-1)
負けた回は相手先手2T《熱錬金術師/Thermo-Alchemist》からのパーフェクトハンド+G2でダブマリ&事故。勝った回はこちら先手ブン回り+後手で《灰の殉教者/Martyr of Ashes》でリセットされてから《象の導き/Elephant Guide》で立て直して勝ち。特にプレイに選択肢があったシーンは思いつかないので回った方が勝ち。
・呪禁(4-2)
理屈の上では、メインにおいて強化の量が多いため、「一瞬相手のサイズを上回る瞬間を作れる」可能性が高まっている。これにより従来型より多少分がよくなっていると考えられる。まぁそれでもメインは2-4だが。サイド後は《象の導き/Elephant Guide》はサイドアウトされるため特に従来型との差はない。《リバー・ボア/River Boa》よりはシラナの方が多分強いねという位。
《象の導き/Elephant Guide》型ストンピィ④今後の予測
2017年11月7日 ストンピィ コメント (2)■ミラーマッチの不毛さ
①、②、③で如何に良いデッキであるかを述べた後でこんなことを書くのもなんだが、《象の導き/Elephant Guide》型がどうというよりも、ストンピィというデッキタイプの今後の展望はそこまで明るくない。
既にストンピィとのミラーマッチの頻度が高く、(リーグでの遭遇率11%)スカージ無しには決定的な有利のつかない引き&先手ゲーであるとなれば、一部のプレイヤーが《大霊堂のスカージ/Vault Skirge》の採用へと舵を切り始めるのも当然と言える。
ただでさえマリガン判断以後、プレイングで左右される余地が大幅に減って面白みの少なくなった*使者以後のストンピィのミラーマッチで、ストンピィ本来の展開と絶望的に掛け離れたスカージをめぐるゲームをやり始める**ことになると、これはもう不毛という言葉以外では形容できない。
*筆者個人の感想。使者以前のストンピィは半分クロックパーミッションのようなデッキだったので展開がかなりプレイで左右された。特にミラーマッチは互いの手札を読み、数ターン先に削りきるための最適解を探す、戦闘とデッキの理解度を問われる熱いゲームになることが多かった。
**スカージゲー下では、スカージを除去するために《散弾の射手/Scattershot Archer》をサイドインするのが基本のような情勢になっていた。ちなみに現状既にスカージゲーになりつつあるので対空サイドは恐らく射手を採用する方がベター。最低限クリーチャーとして頭数になりつつ、恒久的にスカージを牽制できるのは大きいので。
もしお互いスカージと射手とを大量投入する不毛さの極みにまでストンピィミラーを意識してメタが進むならば、《象の導き/Elephant Guide》型が1枚のカードで勝てる可能性が高い分やや有利かもしれない。ただそういうデッキ状況だと地上を支える戦力の枚数的に《シラナの岩礁渡り/Silhana Ledgewalker》をサイドアウトするしかなくなり、《象の導き/Elephant Guide》のエンチャント先に困り、結果として《リバー・ボア/River Boa》を採用する従来型の方が有利な可能性もある。細かい所は実際にやってみないとよく分からないが楽しくなさそうなのでやる予定はない。
■アイコニックマスターズ後に伸びるデッキ達
使者以前よりもゲームスピードが増したためかなり相性が改善したものの、勝率1割の世界から3~4割の世界へ変わった程度で、依然として当たりたくはない相手であるエルフが、11/15に訪れる《暴走の先導/Lead the Stampede》のコモン落ちで強化されて数が増えると、当然ながらストンピィは少し苦しくなってくる。
ただし、エルフの増加に伴い勢力を再び拡大するであろうボロスに有利がつく点は従来型との大きな違いと言えるし、そのままボロスに入るだけかも知れないが、《道の探求者/Seeker of the Way》が採用される白系中速デッキに対しては、ライフゲインに対抗するために《象の導き/Elephant Guide》の類のカードによる継続的ダメージ増加及びブロック性能による自ライフ維持は重要度を増す。
これらのことから、長期的には《象の導き/Elephant Guide》型が主流、他は好みで使われる亜種、という位になって行くだろうと思われる。もしPauper環境のストンピィに興味があってまだ使ったことがない人が居ればアイコニックマスターズ直前である現環境のうちに、要は1週間以内に《象の導き/Elephant Guide》型を試しておくことを勧める。ミラーの不毛さはともかく、まだ旬は過ぎていないはず。
■終わりに
ストンピィを半年以上使っておらず、(対デルバーを除き)「あっ今の負けプレイミスのせいだな」というゲームがちらほら発生した筆者が使ってもリーグで勝率70%を出せるので、デッキパワーは疑いようがない。
あくまで上の予測が当たればという話なので気が早いかも知れないが、Pauper環境に確かな足跡を残したということに祝辞を述べて一連の考察を終えたい。
_DissonancE_さんはおめでとうございます。
①、②、③で如何に良いデッキであるかを述べた後でこんなことを書くのもなんだが、《象の導き/Elephant Guide》型がどうというよりも、ストンピィというデッキタイプの今後の展望はそこまで明るくない。
既にストンピィとのミラーマッチの頻度が高く、(リーグでの遭遇率11%)スカージ無しには決定的な有利のつかない引き&先手ゲーであるとなれば、一部のプレイヤーが《大霊堂のスカージ/Vault Skirge》の採用へと舵を切り始めるのも当然と言える。
ただでさえマリガン判断以後、プレイングで左右される余地が大幅に減って面白みの少なくなった*使者以後のストンピィのミラーマッチで、ストンピィ本来の展開と絶望的に掛け離れたスカージをめぐるゲームをやり始める**ことになると、これはもう不毛という言葉以外では形容できない。
*筆者個人の感想。使者以前のストンピィは半分クロックパーミッションのようなデッキだったので展開がかなりプレイで左右された。特にミラーマッチは互いの手札を読み、数ターン先に削りきるための最適解を探す、戦闘とデッキの理解度を問われる熱いゲームになることが多かった。
**スカージゲー下では、スカージを除去するために《散弾の射手/Scattershot Archer》をサイドインするのが基本のような情勢になっていた。ちなみに現状既にスカージゲーになりつつあるので対空サイドは恐らく射手を採用する方がベター。最低限クリーチャーとして頭数になりつつ、恒久的にスカージを牽制できるのは大きいので。
もしお互いスカージと射手とを大量投入する不毛さの極みにまでストンピィミラーを意識してメタが進むならば、《象の導き/Elephant Guide》型が1枚のカードで勝てる可能性が高い分やや有利かもしれない。ただそういうデッキ状況だと地上を支える戦力の枚数的に《シラナの岩礁渡り/Silhana Ledgewalker》をサイドアウトするしかなくなり、《象の導き/Elephant Guide》のエンチャント先に困り、結果として《リバー・ボア/River Boa》を採用する従来型の方が有利な可能性もある。細かい所は実際にやってみないとよく分からないが楽しくなさそうなのでやる予定はない。
■アイコニックマスターズ後に伸びるデッキ達
使者以前よりもゲームスピードが増したためかなり相性が改善したものの、勝率1割の世界から3~4割の世界へ変わった程度で、依然として当たりたくはない相手であるエルフが、11/15に訪れる《暴走の先導/Lead the Stampede》のコモン落ちで強化されて数が増えると、当然ながらストンピィは少し苦しくなってくる。
ただし、エルフの増加に伴い勢力を再び拡大するであろうボロスに有利がつく点は従来型との大きな違いと言えるし、そのままボロスに入るだけかも知れないが、《道の探求者/Seeker of the Way》が採用される白系中速デッキに対しては、ライフゲインに対抗するために《象の導き/Elephant Guide》の類のカードによる継続的ダメージ増加及びブロック性能による自ライフ維持は重要度を増す。
これらのことから、長期的には《象の導き/Elephant Guide》型が主流、他は好みで使われる亜種、という位になって行くだろうと思われる。もしPauper環境のストンピィに興味があってまだ使ったことがない人が居ればアイコニックマスターズ直前である現環境のうちに、要は1週間以内に《象の導き/Elephant Guide》型を試しておくことを勧める。ミラーの不毛さはともかく、まだ旬は過ぎていないはず。
■終わりに
ストンピィを半年以上使っておらず、(対デルバーを除き)「あっ今の負けプレイミスのせいだな」というゲームがちらほら発生した筆者が使ってもリーグで勝率70%を出せるので、デッキパワーは疑いようがない。
あくまで上の予測が当たればという話なので気が早いかも知れないが、Pauper環境に確かな足跡を残したということに祝辞を述べて一連の考察を終えたい。
_DissonancE_さんはおめでとうございます。
https://www.mtggoldfish.com/deck/437806#paper
Pauper League 5-0デッキにおける《象の導き/Elephant Guide》の初出
https://www.mtggoldfish.com/deck/690444#paper
金魚で確認できる、《象の導き/Elephant Guide》4積み構築の初出
https://www.mtggoldfish.com/deck/746232#paper
現在の型が確定したリスト