私がPauper競技リーグ実装に反対する理由~1VS1 Commanderは如何に死んだか?
私がPauper競技リーグ実装に反対する理由~1VS1 Commanderは如何に死んだか?
■前置き

https://magic.wizards.com/en/articles/archive/magic-online/2019-magic-online-championship-2018-11-12

において来年度のMOについて様々な情報が発表されました。英語を読むのが面倒な方は日本語にざっくりと訳して下さった方が居られるのでこちらをどうぞ。

https://twitter.com/ziguyan/status/1062043533538865155

さて、このエントリーのタイトルについてですが、端的に言って、人が減りこそすれ増えることは見込めないと思うのが理由です。Pauperというフォーマットの将来的な存続にも関わりかねない重大な岐路に見えるので、Wotcへと意見投書をしました。これを読んだ皆さんも、もし同意していただけるようであればお力添えをお願いします。

言ってもどうせ聞いてくれないだろうとも思います。しかし、言わなければ可能性0、言えば0ではないかも知れません。一度実行されてしまってからでは、完全に失敗だったことが明らかになってからしか修正されないのです。

https://mtgo-support.wizards.com/hc/en-us/requests/new

とりあえず私はここからFeedbackという形で送りましたが、もっと良い陳情先をご存知の方は是非教えて下さい。それでは本題へ。

■Pauperリーグの人数

11/13時点での各リーグの参加者の人数が添付した画像の1枚目ですが、PauperのFriendly League(以下フレリ)はおよそ500人。到底健全にフレリとCompetitive League(以下コンペ)が併存できるプレイ人口だとは言えません。コンペのプレイ人口700人程と併存していながら1000人以上ものフレリのプレイ人口を抱えるスタンダードやモダンとは全く話が違うのです。そして今回の発表によれば、併存が無理そうな場合はフレリを消滅させるとのことです。ではこの変更によって何が起こるか、直近の例を見てみましょう。

■1VS1 Commanderの短い生涯

比較的最近公式に実装された1vs1 Commander というフォーマットの話をします。2017年5月にこれのフレリが開始した際には、このフォーマット以外では本当に全く使い道が無い、しかしここでだけは青いデッキの必須カードになった《神秘の合流点/Mystic Confluence》というカードが、5ヶ月もの期間50tixを越える程の高額カードになっています。いかに供給が絞られているカードだとはいえ、ルールがハイランダーですから1人1枚しか使いません。多少の投機の対象になったであろう分を考慮したとしても驚異的な数字です。当時のこのフォーマットの人気を表していると言っていいでしょう。私もこの当時少しプレイしてみたことがありますが、マッチング速度は快適と言っていいものでした。

しかし、何やらわかるようなわからないような理屈により、9月にこのリーグがコンペに変更されます。詳細は以下リンク先2つを参照して下さい。

https://mosouba.com/1370
http://wizardsmtgo.tumblr.com/post/165228640819/commander-1v1-league-change

要するに、「1VS1 Commanderのリーグに居るのは元々遊んでいたカジュアル層ではなく、他のリーグにも精力的に参加しているプレイヤーだったので、その人達向けにコンペに変更します」とのことです。その結果何が起こったかというと、プレイ人口の激減です。添付した画像の2枚目を御覧ください。これはGoatbotsにおけるMystic Confluenceの価格グラフですが、2017年の5月に起こった暴騰に続く高値だった期間がフレリの実装期間中で、そして暴落はコンペへの移行が行われた9/20とほぼ同時と言って良いタイミングです。一度10tix付近まで暴落した後、一瞬30tixまで値段を戻した上でまた一気に下落しているため、この時点ではまだこのフォーマットにおけるカードとしての価値は高かったと見ていいと思います。ならばこの暴落が意味するものはそもそもの需要の減少=プレイヤーの減少と考えても外しては居ないでしょう。余談ながら、その後に行われた禁止カードリストの変更や、1VS1 Commanderリーグが廃墟になったことの影響もあり、現在の取引相場は0.5tixになっています。

そして、人口が激減してから半年という、新興フォーマットがプレイヤーから見切られるには十分な時が経ってから、ようやくWotcはこの過ちを改める気になったようで、今年の4月に1VS1 Commanderのリーグをフレリに戻します。

https://magic.wizards.com/en/articles/archive/magic-online/play-dominaria-starting-april-20-magic-online-2018-04-11

>We want to reinvigorate the 1v1 Commander format
とのこと。


しかし一度壊滅してしまったプレイ人口が戻ることはなく、ついにこの度1VS1 Commanderは正式に廃止の宣告を下されました。1VS1 Commanderのこの終焉は、Pauperに訪れる未来であってもおかしくはないと考えています。

■要約:競技リーグが如何にダメか

最近でこそ紙MTGでもPauperが遊ばれるようになりましたが、PauperはやはりMO主体のフォーマットです。そのMOで衰退してしまえば、フォーマットとしての将来的な消滅は決してありえない話ではありません。

2018年11月現在、1VS1 Commanderのフレリには50人も居ません。ヴィンテージのコンペは100人しか居ません。当然、この2つは普通にMagic Onlineをプレイしている我々が考えるような対戦ツールとしては機能していません。したがって、普通の意味で対戦を楽しみたい人が新規参入する可能性は低いです。1戦マッチングするのに30分や1時間待つ必要のあるリーグをわざわざやろうと思うのは、相当な変わり者か、余程熱狂的なそのフォーマットのファンに限られます。不人気だという印象がつき、この状態まで一度落ち込んでしまうともはや復活は不可能です。

コンペとフレリとの差に関する追加の考察材料として、レガシーについても述べておきます。まず、紙MTGにおけるレガシーのプレイ人口はPauperとは段違いに多いはずです。レガシーでのグランプリが成り立って、しかも大盛況になる程ですから。Magic Onlineにおけるレガシーは、紙MTGと違って再録禁止カードという参入障壁がなく、レガシーにしては相当なお手軽価格で始められるので、理屈で考えるならば人気フォーマットになってもおかしくはありません。しかし実際にはそうはなっていません。レガシーコンペにはPauperフレリと同程度の500人しか居ないのです。仮にレガシーがフレリであったならば、おそらくもう少し人口は増えるでしょう。1VS1 Commanderフレリの開設からしばらくの人気は、このフォーマット固有のファンではなく、MO内で様々なフォーマットを遊ぶプレイヤーがやってきて気軽に参加したことによって支えられていたのですから。

競技イベントに頻繁に採用されているスタンやモダンのような、競技性の高いとされるフォーマットならばいざしらず、どちらかと言えばカジュアルよりのフォーマットにおいて、フレリではなくコンペであるということは、プレイ人口に間違いなく負の影響をもたらします。負けた時に12tixもの参加費を没収されることが楽しい人なんているわけがありません。プレイヤー間での金銭の奪い合いという側面がフレリよりも強調されているコンペでは、敗者の意識がその点へとより向かいやすくなります。

スタンとモダンのように、選択肢があった上で敢えてコンペを選んでいるプレイヤーならば、勝って取り返すんだと考えて済ませるでしょうが、そのフォーマットのリーグがコンペしか無いけれど負けたときに12tixも取られるのは嫌、という層はリーグに参加しなくなるだけでしょう。ただでさえスタンやモダンに比べて限られるプレイ人口を、更に減らしてしまうのは正しい施策でしょうか?

■ならどうすればいいのか

今回の発表の、レガシーやヴィンテージやPauperをやりこんだプレイヤーにMOCSに参加する可能性が微かながら出るというのは面白い発想だとは思います。各フォーマットでのポイントが独立であることも踏まえると、これは様々なフォーマットをもっと遊んでもらおう!という、善意と呼んでも良さそうな意図で発案されたように感じられます。しかし、そのための手法がPauper視点では逆効果にしか見えません。まずはコンペとの人口分散、そしてフレリの消滅でのフォーマット自体の衰退の危険性の二段構えですから。

この問題の解決策は、単純にスタンとモダン以外のフォーマットはすべてフレリにし、2016年度までのように、フレリでもこのフォーマットポイントを出すようにすることだと思います。ポイントの量は以前のように少なめに調整しても構いません。

https://mosouba.com/350

今回発表された内容は、MOCSに参加するに相応しい、競技的な技量を持ったプレイヤーを選出することを目的としているように思えます。しかし、そのためにこそ何より重要なのは健全なリーグ人口の維持です。「競技的であること」は高い参加費を支払うことによって生み出されるものではなく、より多くの参加者を確保して競争させることによってこそ生み出されるものだと私は考えるからです。

■終わりに

お読みいただきありがとうございました。最後に今回の件のPauperに関する部分だけを改めてまとめておくと、

PauperのFormat Playoffなり、Championshipなりは面白い話。グラインダー層もPauperをプレイするようになって面白さに触れた結果、活性化に繋がれば大変嬉しい。少なくともPauperを運営側も気にかけてくれているということは喜ばしい。

しかし、競技リーグに変更するのは絶対に反対。人が減る。

人が居てこそ競争があり、そこに競技性が生まれる。

これらの3点が要点です。

さて、冒頭にも書きましたが、Pauperへの競技リーグ実装に対してこのように極めて強く反対する旨を、拙いながら英語で書いてFeedbackへと送りました。これを読んでくださって、同意してくださる方が居られれば是非ご協力をお願いします。

コメント

nophoto
a
2018年11月14日22:14

5ゲームで12チケ(1ゲームあたり2.4チケ)って重いですよね・・・
DEは6チケだったことを考えると、フレリの8チケですら割増感があるのに

競技リーグを基準にされるとガチデッキ以外使うのは躊躇われるようになってしまうのでちょっと残念です

mw
2018年11月19日2:20

下手するとデッキの価格よりリーグ1回の参加費の方が高いのってどうかと思います。
(ストンピィは現在値動きや採用カード次第で12tix以下で組めます)

ゆるゆるやる方が合ってると思うんですけどね、Pauper.
mw

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